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バイブレーターは「医療器具」だった

女性の快楽をめぐる、奇妙で真剣な歴史

BiBiOのような振動デバイスの「先祖」が、
19世紀の医師の診察室で生まれたことをご存じでしょうか。

その歴史は、女性の体と性がいかに長い間「誤解」されてきたかを教えてくれる、驚くべき物語です。

「ヒステリー」という謎の病名

19世紀のヨーロッパ
特にビクトリア朝時代のイギリスで、女性に頻繁に下された診断がありました。

「ヒステリー(hysteria)」です。

症状は非常に幅広く、
倦怠感・不眠・神経過敏・食欲不振・腹部の重さ・気分の浮き沈み・「問題を起こしがちな傾向」に至るまで、
原因不明のあらゆる不調がこの診断名でまとめられていました。

当時の推計では、成人女性の相当数がこの診断を受けていたとも言われています。

「ヒステリー」という言葉の語源は、ギリシャ語の「hystera(子宮)」。

古代ギリシャの医学者たちは、子宮が体内をさまよって様々な臓器を圧迫することが
女性特有の不調の原因だと信じていました。

この非科学的な概念が、なんと近代医学が整備された19世紀まで実質的に生き残っていたのです。

医師が処方した、信じられない「治療法」

問題はその治療法です。

当時の医師たちは、ヒステリーの症状を緩和するために
「骨盤マッサージ」、つまり医師による性器の手指刺激を行い、
患者が「ヒステリー発作(hysterical paroxysm)」に達することで症状が緩和されると考えていました。

現代の私たちから見れば、それはオーガズムそのものです。

しかし当時の医師も患者も、それを「性的なもの」とはまったく認識していませんでした。

セクシュアリティは「夫婦間の行為の中にのみ存在する」という時代の枠組みの中で、
診察室での行為は純粋に「医療処置」として行われていたのです。

「疲れた医師」が生んだ、電動バイブレーター

この処置には一つ問題がありました。

医師たちが、非常に疲れることです。

19世紀の医学雑誌には、
骨盤マッサージが「時間がかかり、体力を消耗する」と医師たちが嘆く記述が残っています。

この「医師の負担を減らしたい」という実務的な動機から、振動装置の開発が始まりました。

1870年代には歯車式の機械的バイブレーターが医師向けに販売され、
1873年にはフランスの施設で最初の電動バイブレーターが治療に用いられました。

19世紀末には電動式が普及し、処置時間は1時間以上から10分以下に短縮されたと記録されています

*アリゾナ州立大学 Embryo Project Encyclopediaの記録より

「快楽」が認識されるまでの長い道のり

この歴史が示すのは、女性のオーガズムが長い間
「性的なもの」として認識されなかったという皮肉な事実です。

医師は毎日患者にオーガズムをもたらしながら、
それを「医療行為」として処理していた。

女性の性的快楽は存在していたのに、概念として「存在しないこと」にされていた。

ヒステリーという診断名が医学の正式分類から削除されたのは、1952年のことです。

「誤解の歴史」の先にあるもの

BiBiOが存在する今の時代は、ある意味でこの長い歴史の「続き」です。

女性の快楽は、ようやく「医療行為」でも「罪悪」でもなく、
本人が自分のために享受してよいものとして認識されるようになってきました。

過去の女性たちは、自分の体が求めているものが何かを、
「病気の症状」として医師の診察室へ持ち込むしかありませんでした。

私たちは今、それを自分の意志で、自分の手で、選ぶことができます。

その自由を、当たり前のこととして受け取ってほしい
BiBiOはそう思っています。

参考:Embryo Project Encyclopedia, Arizona State University「Medical Vibrators for Treatment of Female Hysteria」
Victorian-era.org「Female Hysteria during Victorian Era」
Rachel Maines “The Technology of Orgasm”(1999, Johns Hopkins University Press)

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