少子化について話すとき、日本の議論はほぼ決まって同じ方向へ向かいます。
子育て支援の拡充、保育所の整備、育休取得の促進、出産一時金の増額。
どれも重要で、間違ってもいない。
でも、何か大きなものが抜け落ちている気がして、ずっともやもやしていました。
そのもやもやに、少し言葉をくれたのが経済学者・成田悠輔氏の分析でした。
成田悠輔氏が指摘する「不都合な真実」
成田氏はこう言います。
「少子化問題をきちんと解決した先進国は一つもない」と。
アメリカが少子化していないように見えるのは、
大規模な移民受け入れによって人口が補填されているからであり、
出生率という観点ではアメリカも同様の傾向を持つ。
北欧の子育て支援政策は一時的に出生率を押し上げることがあっても、
構造的な反転には至っていない。
成田氏が指摘する本質はこうです。
農業社会において子どもは労働力であり、老後の保険でもあった。
その時代には、「子どもを産む」という選択に経済的合理性があった。
しかし現代の先進国において、子どもは「費用がかかる存在」になった。
個人の自由が保障され、多様な人生の選択肢がある社会では、
多くの人が子どもを持たない方向へ流れていくのは、むしろ合理的な行動だ、と。
この論点に、私は大きく頷きました。
少子化は「失敗」でも「怠惰」でもなく、豊かになった社会が必然的に向かう先でもあるのかと納得できました。
それでも制度を整えることは正しい
ただし、成田氏の分析は「だから少子化を放置すべき」という結論ではありません。
経済的に子どもを持ちたいと思っている人が、
コストの高さゆえに諦めるという状況は、事実であり、そして制度で改善できる問題です。
保育の充実、教育費の無償化、産後ケアの整備、男性の育休取得率の向上。
これらは確実に「持ちたいのに持てない」人たちの障壁を下げると私たちも感じます。
補助金や制度の拡充は必要だと私たちも考えます。
政府や関係者の皆様、よろしくお願いします。
でも、ここで終わってしまうのが日本の議論のほとんどです。
そしてBiBiOは、そこで終わらせたくないと思います。
日本の「ドライな愛情」という、もう一つの問題
数字から見てみましょう。
2023年、社会学者の山田昌弘氏(中央大学)が1万305人を対象に行った調査では、
日本の夫婦の約7割がセックスレスという結果が出ています。
同年、別の調査でも夫婦の68.2%がセックスレス傾向にあると報告されています。
同時に、既婚男性の
不倫経験率は46.7%
というデータもあります(弁護士JP調査)。
つまり、妻とはセックスレスでも、外では性的な関係を求めている男性が半数近くいるということです。
もちろん女性側の不倫も事実として起こっており、ここでの論点は「男性が悪い」などというものでは全くありません。
この二つのデータを並べると、日本の夫婦関係の構造が見えてくると思います。
「人として好きだから結婚する。でも男女としての関係は別の話」
という、よく日本で聞くことのある、愛情の分離です。
子どもが生まれると「家族」になり、パートナーを「女性」「男性」として見ることが難しくなる
これは多くの夫婦が経験する現実です。
「子どもが生まれてからセックスレスになった」という声は、産後ケアの文脈でもよく語られます。
でも根底にあるのは、パートナーを「恋人」として見続ける文化が、日本には薄いのではないかということです。
「おしどり夫婦」がテレビ番組になる異常さ
皆さんも一度は目にしたことがある、テレビでの「おしどり夫婦特集」
こんな番組やシーンが作られていること自体、
どこかに「こんな夫婦、珍しいですよね」というニュアンスが滲んでいるのではないでしょうか。
長年連れ添っても仲睦まじく、ラブラブな夫婦
それが「珍しいもの」として取り上げられること自体が、私たちには奇妙に映ります。
本来、ずっと愛情を持ち続けることは「珍しい才能」ではなく、関係性の中で育てていくものではないでしょうか。
それがTV番組の「コンテンツ」になるということは、
裏を返せば「ほとんどの夫婦はそうではない」という現実を映しているのかもしれません。
フランスが教えてくれること
フランスの夫婦観には、賛否が分かれる部分も多くあります。
不倫に寛容な文化
婚外子が多いこと
日本的な感覚からすると戸惑いを覚える側面もとても分かります。
でも一方で、フランスでは「夜の生活を大切にしない夫婦は、関係が壊れる」という意識が文化の底流にあります。
現代フランスで取り上げられる視点として
「不倫よりセックスレスのほうが関係を壊す」という考え方があり(現代ビジネス)、
セックスや身体的な愛情表現は「恥ずかしいもの」ではなく、
「関係を維持するための、必要で豊かな営み」として位置づけられています。
フランスの全てを模範にする必要はありません。
でも、「パートナーとの愛情関係を、結婚後も意識的に育てる」という視点は、
日本の夫婦文化にもっと根付いてほしいと感じます。
補助金で子どもは増えるかもしれないが、
ラブラブじゃない夫婦は、子作りのパートナーになる
経済的支援が充実しても、夫婦間に愛情と性的な関係性がなければ、
子どもが生まれる可能性はそもそも生まれません。
もしくは生物的なドライな子作りという「作業」になります。
「好きだから結婚したけど、子どもが生まれてからはもう家族として割り切っている」
この感覚が「普通」として受け入れられていることが、少子化の背景にある見えにくい問題だとBiBiOは考えます。
子作りの前に「子どもを一緒に育てたいくらい、この人が好きだ」という感情がある。
その感情を長く保てる関係を、ふたりで作り続けていく。
それが子どもを持つ動機の根本にあるはずです。
制度はその動機を下支えできますが、動機そのものは、ふたりの関係性の中にしかありませんし、
社会や制度でどうにかなるものではありません。
BiBiOが言いたいこと
少子化対策の議論に「夫婦の愛情の質」を持ち込むと、
「そんなことは関係ない」と言われることがあります。
でも本当にそうでしょうか。
国が補助金を出し、保育所を整備し、育休を促進する
これらはすべて「子どもを持ちやすい環境を作る」試みです。
でも、その環境の中心にいる夫婦が、互いをパートナーとして愛し続けているかどうか
そこにも同じくらい目を向けるべきだと、BiBiOは思います。
それがなければ、少子化か制度で改善したとしても、
その後の子育ての中でのトラブルや困難を乗り越えることは、より大きな壁として立ちはだかると思います。
美しいプレジャーアイテムを通じて
パートナー同士が身体的なつながりや、愛情表現を大切にする文化を育てたい。
そして、性をポジティブに、健やかに語れる夫婦を増やし、
子供への愛情という道徳教育や、健全な性教育の普及を後押ししたい。
これは遠回りで長期的な試みかもしれないけれど、ラブラブな夫婦が「珍しいもの」ではなく
「当たり前」になる社会への一歩になり、満たされて幸福な家族が増えていく道だと信じています。
だからこそ、少子化対策は、制度だけじゃ足りない。
参考:成田悠輔氏(テレビ愛知「少子化問題の解決必要なし」ほか複数インタビュー)/ 山田昌弘氏(中央大学)1万人調査「日本人夫婦の7割はセックスレス」(PRESIDENT Online)/ レゾンデートル株式会社「夫婦のセックスレスに関する実態調査」(2023年、n=4,000)/ 弁護士JP「既婚男性の不倫経験率46.7%」/ 現代ビジネス「不倫よりもセックスレスのほうが悪い——フランス人の不倫観」