Netflixで配信が始まった『SとX』というドラマをご覧になったでしょうか。
中島健人さんが演じるのは、霜鳥壱人というセックスセラピスト。セックスレス、ED、性的なトラウマ。
誰にも打ち明けられない悩みを抱えた人々が、彼のクリニックを訪れます。講談社『モーニング』で連載されている多田基生さんの漫画『SとX〜セラピスト霜鳥壱人の告白〜』が原作です。
筆者は観ながら、ひとつの疑問が浮かびました。
こういう専門家は、日本に実在するのだろうか。もし悩んだとき、どこへ行けばいいのだろうか。
調べてみましたので、皆様にも共有させてください。
結論から言うと、実在します
日本には、一般社団法人 日本性科学会という学会があり、そこが「セックス・カウンセラー」と「セックス・セラピスト」の資格を認定しています。
ドラマのような専門クリニックが街のあちこちにあるわけではありません。けれど、性の悩みを専門的に扱う訓練を受けた人は、日本にいます。
「カウンセラー」と「セラピスト」は、別のもの
まず知っておきたいのが、この二つが明確に区別されているということです。
セックス・カウンセラー
性に関する不安や悩みに対して、カウンセリングの技法を用いて広く性の相談にかかわる専門家です。性機能障害の治療そのものを主目的とはしていません。
セックス・セラピスト
より限定された専門的職能によって、性機能障害の直接的な治療を行う専門家です。
こちらの資格を申請できるのは、医師、臨床心理士、保健師、助産師、看護師など、医療職の資格を持つ人(またはそれと同程度の技能を有する人)に限られます。
認定の要件も軽くありません。セラピストの場合、学会員歴5年以上、学術集会への出席5回以上、研修会3回以上、研究発表3回以上、論文発表2編以上が求められます。
つまり誰でも名乗れる肩書きではないということです。ここは、探すときの大事な手がかりになります。
どこで受けられるのか
セックスセラピーが受けられる医療機関は、産婦人科、泌尿器科、精神科(心療内科)が中心です。
日本性科学会のウェブサイトには「セックスカウンセラー・セラピスト一覧」が公開されており、認定を受けた専門家と、その所属先を確認することができます。まずはここを見るのが確実です。
一般社団法人 日本性科学会
セックスカウンセラー・セラピスト一覧
資格認定制度について
悩みの種類によって、入口が違います
「性の悩み」とひとことで言っても、行き先は異なります。目安として整理しておきます。
痛み、濡れにくさ、月経に関わる不調 → 産婦人科
性交痛、乾燥、出血、かゆみなど、体の側に症状がある場合はまず婦人科です。ホルモンの影響や、治療できる疾患が背景にあることもあります。
勃起や射精の悩み → 泌尿器科
EDや射精に関する悩みは泌尿器科が専門です。生活習慣病や薬剤の影響が関係していることもあり、体の検査が必要な場合があります。
気持ちが向かない、すれ違い、セックスレス → カウンセリング
体に問題がないのに気持ちが向かない。回数や求め方が合わない。話し合いにならない。こうした関係性の問題は、カウンセリングの領域です。ひとりで受けることも、パートナーと二人で受けることもできます。
過去の被害、トラウマ → 精神科・専門相談窓口
性暴力の経験が背景にある場合は、専門的な支援が必要です。下記の窓口が、医療・心理・法律を横断してつないでくれます。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
#8891(はやくワンストップ・通話無料)
最寄りのワンストップ支援センターにつながります。
Cure time(キュアタイム)
性暴力に関するSNS・チャット相談。受付時間は公式サイトでご確認ください。
相談するとき、知っておくと楽なこと
うまく説明できなくて構いません
専門家は、言葉にしづらいことを扱うのが仕事です。「うまく言えないのですが」から始めて大丈夫です。メモを書いていって、見せるだけでも構いません。
費用は、事前に確認を
医療機関での診察や検査は保険が適用されるものがありますが、カウンセリングやセラピーは自費となる場合が多いです。金額も所要時間も機関によって異なるため、予約時に確認しておくと安心です。
ひとりで受けても構いません
パートナーの問題だと感じていても、二人で行くのが難しいこともあります。まずご自身だけで相談することは、まったく問題ありません。そこから先の進め方を、一緒に考えてもらえます。
専門家の数は、多くありません
正直にお伝えすると、認定を受けた専門家の数は限られており、地域によっては近くに見つからないこともあります。オンライン対応の有無を含めて、問い合わせてみてください。
「悩んでいない人なんていない」ということ
ドラマのなかで、主人公は「セックスに悩んでいない人なんていませんよ」という趣旨のことを繰り返し言います。
この一言が、多くの人に届いたのだろうと思います。悩んでいるのが自分だけだと思っているあいだ、人は相談することができません。誰もが多かれ少なかれ抱えているのだと知ることが、いちばん最初のハードルを下げてくれます。
作品が話題になることの意味は、そこにあるのかもしれません。話していいことなのだ、と気づく人が増えること。
おわりに
性の悩みは、体の話でありながら、同時に関係の話であり、自分自身の話でもあります。だからこそ、ひとりで抱え込むと出口が見えなくなります。
専門家に相談することは、大げさなことでも、恥ずかしいことでもありません。歯が痛ければ歯科に行くように、必要なときに、必要な場所を訪ねればいいのだと思います。
BiBiOは「愛する、を美しく。」という思想を掲げています。その前提には、自分の心地よさを、自分で確かめてよいという考えがあります。確かめる途中で困ったとき、頼れる場所があることを、知っておいていただけたらと思います。