Netflix『ブリジャートン家』のシーズン5が、三女フランチェスカが主人公。相手役は、亡き夫のいとこにあたるミカエラ。女性同士の恋が、1シーズンをかけて描かれます。
トラウマではなく、喜びを描く
発表にあたり、ショーランナーのジェス・ブラウネルはこう語っています。クィアな喜びを描くシーズンにする、クィアなトラウマを描くシーズンにはしない、と発言していました。これまでマイノリティの恋は、苦しみや悲劇とともに描かれることが多すぎました。だからこそ、あらかじめ「喜びを描く」と宣言することに意味があったのです。
ふたつの愛は、並ぶ
もうひとつ印象深いのが、フランチェスカと亡き夫ジョンとの関係の扱い方です。今後クィアな物語が展開しても、それはジョンへの愛を否定するものにはならない。制作陣はそう説明しています。
ジョンへの愛は、情熱というより友情や尊敬、共通の関心に根ざしたものだった。けれど情熱は、関係を構成するひとつの要素にすぎない——関係のあいだに序列はないという考え方が、ここにはっきりと示されています。ひとりの人が、人生のなかでまったく質の違うふたつの愛を経験する。どちらも本物で、どちらも本人を形づくっている。そういう描き方です。
私たちの関係にも、同じことが言えます
関係を語るとき、私たちはつい順位をつけたくなります。あのときの情熱に比べて今は、とか、友情のような関係になってしまった、とか。
けれど情熱の量で、関係の価値が決まるわけではありません。穏やかな尊敬でできた関係も、静かな共同作業でできた関係も、それぞれに完結した愛のかたちです。
今の自分たちの関係を、かつての形と比べて採点してしまいそうになったとき。「これは、この関係にふさわしい愛のかたちなのかもしれない」と思い直せること。ドラマがくれるのは、案外そうした視点なのだと思います。